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年末年始に起こりやすいお口のトラブル Blog

歯科医 永田 さやか (ながた さやか)
スカイ&ガーデン デンタルオフィス 院長

年末年始は歯科医院の休診日が重なりやすく、口腔内にトラブルが生じた際、対応に迷いやすい時期です。この期間に多く寄せられる相談には、虫歯の痛みだけでなく、外傷、急性炎症、補綴物の脱離など、口腔外科領域に関わる内容も含まれます。緊急性を正しく判断できないまま経過を見ると、症状が進行し、治療の選択肢が限られることがあります。今回は、年末年始に起こりやすい具体的なトラブルを整理しながら注意点を解説します。

年末年始に口腔内トラブルが
増えやすい背景

この時期は、普段と比べて生活リズムが乱れやすくなります。食事時間が不規則になり、間食や飲酒の頻度が増えることで、口腔内は細菌が活動しやすい状態になりがちです。さらに、睡眠不足や疲労の蓄積は唾液分泌量の低下につながります。唾液には、口腔内を洗い流す作用や、細菌の増殖を抑える役割があるため、その働きが弱まると炎症や痛みが生じやすくなります。こうした条件が重なることで、もともと存在していた小さな問題が、急性症状として表面化するケースが多く見られます。

詰め物・被せ物が
外れやすくなる理由

年末年始に増えるトラブルの一つが、詰め物や被せ物の脱離です。お餅や田作りのようなおせち料理、キャラメル、ナッツ類などは、粘着性や咀嚼負荷が高く、補綴物に強い力が加わりやすくなります。特に、装着から時間が経過している補綴物では、接着材料の劣化によって保持力が低下している場合があります。その状態で咀嚼時に強い力が加わると、食事中に外れてしまうことがあります。脱離した状態を放置すると、内部に汚れや細菌が入り込み、虫歯や炎症の原因になることがあります。

詰め物が外れた際の注意点

誤った応急処置は、その後の治療を複雑にする要因となる可能性があります。

  • 市販の接着剤で戻さない

  • 取れた補綴物は洗浄し、清潔な容器で保管する

  • 外れた部位で噛まない

食事を長い時間かけて食べる
ことによる口腔環境の変化

年末年始は、少量の飲食を長時間続ける生活になりやすい傾向があります。このような状態では、口腔内が酸性に傾く時間が長くなり、歯の表面が影響を受けやすくなります。また、歯磨きの回数や丁寧さが低下すると、歯垢が停滞しやすくなります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが高まり、歯ぐきの腫れや痛みとして現れることがあります。この時期に感じる違和感の多くは、短期間の生活習慣の変化が引き金になっています。

外傷による口腔内トラブルへの対応

帰省や人混み、積雪など、慣れない環境での外出が増える年末年始は、転倒や衝突による口元の外傷も起こりやすくなります。歯が欠けた、動いている、位置が変わったといった症状が見られる場合、内部で損傷が進んでいる可能性があります。もし、歯が完全に抜けてしまった場合は、乾燥を防ぐことが重要です。適切な保存状態を保つことで、歯を保存できる可能性が高まることがあります。見た目の変化が軽度でも、骨や歯根への影響は画像検査を行わなければ判断できないケースがあります。

急性炎症が疑われる症状と
注意点

親知らず周囲や歯の根の先に炎症が起こると、短期間で腫れや痛みが強くなることがあります。この状態では、飲み込みづらさや開口制限を伴うこともあります。市販の鎮痛剤によって一時的に症状が和らぐ場合もありますが、原因そのものが解消されているとは限りません。症状が繰り返される、または範囲が広がる場合には専門的な検査と診断が必要になります。

自己判断では避けたいこと

緊急時には、次のような対応が行われがちですが、注意が必要です。これらは、炎症を悪化させたり、診断や治療を複雑にする要因の一つとなります。

  • 腫れている部位を指で押す

  • 強い力で歯磨きを行う

  • 鎮痛剤を長期間使用し続ける

  • 痛みが治まったからと放置する

急な歯や歯ぐきのトラブルに ~口腔外科的アプローチ~

歯や歯ぐきのトラブルは、目に見える部分だけで起きているとは限りません。痛みや腫れが限局しているように感じられても、その奥では歯の根の周囲や顎の骨、神経、軟組織へ影響が及んでいることがあります。特に外傷や急性炎症の場合、表面の変化だけで状態を判断することは難しくなります。
スカイ&ガーデンデンタルオフィスには口腔外科専門医が在籍しています。口腔外科専門医は、歯の治療にとどまらず、歯ぐき、顎の骨、口腔粘膜、神経など、口腔周囲全体を対象として診療を行います。そのため、外傷や急な腫れ、補綴物のトラブルに対しても、症状の背景を多角的に捉えることが可能です。診察では、視診に加えて画像検査などを用い、表面からは把握しにくい変化の有無を確認します。そのうえで、現在の状態に応じた対応方針を検討することで、症状の拡大を防ぎ、安定した経過につなげることを目指します。

まとめ

年末年始は、食生活の乱れや生活リズムの変化により、詰め物が外れる、歯ぐきが腫れる、痛みが生じるといった口腔内トラブルが起こりやすい時期です。違和感が軽度であっても、歯の内部や周囲組織で変化が進んでいることがあり、自己判断のみで経過を見ることが適切とは限りません。
埼京線「武蔵浦和」駅から徒歩3分のスカイ&ガーデンデンタルオフィスでは、口腔全体を視野に入れた診断のうえ、相談も受け付けています。症状の背景を丁寧に確認したうえで、その時点の状態に応じた処置を施すことが、口腔内環境の安定につながります。痛みや違和感、補綴物の不具合などが気になる場合は、早めの相談を検討してみてください。

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