皆さんは酸蝕症(さんしょくしょう)という言葉をご存知ですか?
酸蝕症とは
酸蝕症とは、 酸によって歯が溶ける症状をいいます。「虫歯」は、虫歯菌がエサである糖を分解するときに作る酸で歯が溶けますが、「酸蝕症」は細菌が関与しないという点が虫歯と違います。酸蝕症はよく見られる症状ですが歯にどのような影響を及ぼすかはほとんど知られていません。
歯の表面のエナメル質は体の中で一番硬い組織ですが、食べ物や飲み物に含まれる酸によって溶け、知覚過敏症状を引き起こす原因になります。酸を含む食品は非常に多く、清涼飲料水やスポーツドリンク、果物やフルーツジュース、ドレッシングなどの酢も含まれます。
例えば、1日に果物を2回以上食べると酸蝕症のリスクが増加します。またワインはpH(水素イオン指数)2.8~3.8で、実はとても酸性度の強い飲料です。
酸蝕症の原因
酸性の薬剤の服用(ビタミン剤など)、胃酸の逆流、拒食症などの摂食障害も酸蝕症の原因となります。
酸蝕症が進行するとエナメル質は薄くなり、歯の形、色、質感、見た目に変化が生じ、歯がシミるようになります。酸蝕症の症状として知覚過敏以外に次のようなものがあります。
- 歯が透き通る。
- 歯が丸みを帯びる。
- 歯が黄ばむ
- 歯ぎしりなど機械的な力が加わることで、 歯の表面に小さなへこみができる。
- 詰めたもの、被せたものが取れやすくなる。
酸蝕症の予防と対策
酸蝕症の予防と対策として、まず原因の除去と歯質の強化が大切です。酸性の食べ物や飲み物からエナメル質を守るため、誰でもできる簡単なステップをご紹介します。
STEP1
普段の食生活の中で、酸性の食品を避ける必要はありませんが、食べ方に注意が必要です。酸性のものを食べる時は、チーズや牛乳、あるいは酸性ではない他の食べ物や水、お茶などの飲み物を取り入れ、口の中の環境を中性に近づけてあげる工夫が必要です。
STEP2
唾液には口の中を中性に戻そうとする作用があります。よく噛んで唾液をたくさん出すことや、唾液が多く出るように唾液腺マッサージをすることも効果的です。また唾液の量が少なくなる就寝前の飲食を避けましょう。
STEP3
酸性の飲み物をがぶ飲みをしたり、口の中に長い時間溜めたりしないようにしましょう。ダラダラ食べ、チビチビ飲みはよくありません。
STEP4
歯質を強化するフッ素配合の歯磨き剤やフッ化物洗口を使用しエナメル質の耐酸性を高めましょう。歯を磨く際はやわらかめのハブラシを使用してください。
STEP5
過去6ヵ月間、歯科医を受診していない場合は、診察の予約を入れましょう。エナメル質は一度失ってしまうと元には戻せないため、酸蝕歯はお口全体の健康に影響する可能性があります。酸蝕症を放置すると歯の神経が炎症を生じることもあります。
肉眼でエナメル質の損耗を発見することは難しく、歯科医による診断がエナメル質が酸蝕の影響を受けているかを知る唯一の方法です。
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