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酸蝕症とは?歯が溶けたり、知覚過敏の原因になるって本当? Blog

歯科医 永田 さやか (ながた さやか)
スカイ&ガーデン デンタルオフィス 院長

皆さんは酸蝕症(さんしょくしょう)という言葉をご存知ですか?

子どものころ「コーラを飲むと歯が溶けるよ!」と聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。「炭酸飲料で歯が溶ける」といわれる主な理由は、炭酸飲料に含まれる酸が歯のエナメル質を溶かす性質を持っているということが挙げられます。

酸蝕症とは、 酸によって歯が溶ける症状をいいます。「虫歯」は、虫歯菌がエサである糖を分解するときに作る酸で歯が溶けますが、「酸蝕症」は細菌が関与しないという点が虫歯と違います。

歯の表面のエナメル質は体の中で一番硬い組織ですが、食べ物や飲み物に含まれる酸によって溶け、知覚過敏症状を引き起こす原因になります。酸を含む食品は非常に多く、清涼飲料水やスポーツドリンク、果物やフルーツジュース、ドレッシングなどの酢も含まれます。例えば、1日に果物を2回以上食べると酸蝕症のリスクが増加します。またワインはpH(水素イオン指数)2.8~3.8で、実はとても酸性度の強い飲料です。

酸蝕症の原因

酸性の薬剤の服用(ビタミン剤など)、胃酸の逆流、拒食症などの摂食障害も酸蝕症の原因となります。

酸蝕症が進行するとエナメル質は薄くなり、歯の形、色、質感、見た目に変化が生じ、歯がシミるようになります。酸蝕症の症状として知覚過敏以外に次のようなものがあります。

  • 歯が透き通る。
  • 歯が丸みを帯びる。
  • 歯が黄ばむ
  • 歯ぎしりなど機械的な力が加わることで、 歯の表面に小さなへこみができる。
  • 詰めたもの、被せたものが取れやすくなる。

*摂食障害との関係について*

特に若い女性に多い疾患である、摂食障害。新型コロナウイルスの感染拡大により、10代の神経性痩せ症の患者数が1,5倍~2倍に増え、低年齢化が進んでいるそうです。食事をしたがらない「拒食」と、大量の食事をとる「過食」のいずれも、健康を大いに損なうものです。

過食症による嘔吐は、胃酸を逆流させるため、酸蝕症の原因になります。前歯の裏は特にダメージを受けやすく、知らないうちに歯の厚みが極端に薄くなっていることもあります。
摂食障害から回復途中にある方、回復はしても歯の不調に悩む方は、ぜひ一度検査を受けることをお勧めします。

酸蝕症の予防と対策

酸蝕症の予防と対策として、まず原因の除去と歯質の強化が大切です。酸性の食べ物や飲み物からエナメル質を守るため、誰でもできる簡単なステップをご紹介します。

STEP1

普段の食生活の中で、酸性の食品を避ける必要はありませんが、食べ方に注意が必要です。酸性のものを食べる時は、チーズや牛乳、あるいは酸性ではない他の食べ物や水、お茶などの飲み物を取り入れ、口の中の環境を中性に近づけてあげる工夫が必要です。

STEP2

唾液には口の中を中性に戻そうとする作用があります。よく噛んで唾液をたくさん出すことや、唾液が多く出るように唾液腺マッサージをすることも効果的です。また唾液の量が少なくなる就寝前の飲食を避けましょう。

STEP3

酸性の飲み物をがぶ飲みをしたり、口の中に長い時間溜めたりしないようにしましょう。ダラダラ食べ、チビチビ飲みはよくありません。

STEP4

歯質を強化するフッ素配合の歯磨き剤やフッ化物洗口を使用しエナメル質の耐酸性を高めましょう。歯を磨く際はやわらかめのハブラシを使用してください。

STEP5

過去6ヵ月間、歯科医を受診していない場合は、診察の予約を入れましょう。エナメル質は一度失ってしまうと元には戻せないため、酸蝕歯はお口全体の健康に影響する可能性があります。酸蝕症を放置すると歯の神経が炎症を生じることもあります。

肉眼でエナメル質の損耗を発見することは難しく、歯科医による診断がエナメル質が酸蝕の影響を受けているかを知る唯一の方法です。

酸蝕症の治療法

初期の場合、歯科医院で行うフッ素塗布で歯をバリアする治療法が基本

高濃度のフッ素を塗布し、歯質を強化することでエナメル質を丈夫にし、酸に溶けにくくします。
フッ素には歯質強化の他、歯表面のエナメル質修復(再石灰化)、虫歯菌発育の抑制に有効といった効果もありますので、虫歯予防としても定期的に行うことをおススメします。

中期以降の場合、詰め物や被せ物をする

歯の表面の凹凸や、酸で溶けて隙間ができてしまった部分、歯が短くなってしまった部分、薄くなって透けるような部分は詰め物や被せ物によって修復します。

浅い奥歯の凹凸などはコンポジットレジン(保険適用)を詰めて修復することができますが、奥歯はすり減りや摩耗が起こりやすい部位なので長持ちしない場合もあります。

噛みしめや食いしばりがあったりしてより強度が必要な場合、審美性が求められる前歯の場合には、被せ物で対応することもあります。

詰め物や被せ物は使用する材料が様々で、それぞれにメリットデメリットがあります。お口の中全体をよく観察してくれる歯科医師と相談されて、ご自身に合った材料を選ぶことも歯を長持ちさせるポイントとなります。

2015年の調査で国民の約4人に1人が酸蝕症であるというデータもあり、近年では「酸蝕症」は歯周病や虫歯に次ぐ「第三の歯科疾患」として問題になっています。

今回は「酸蝕症(さんしょくしょう)」について詳しくご紹介しました。

最近歯がしみるという方は武蔵浦和の歯科医院スカイ&ガーデンデンタルオフィスまでご相談ください。

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