医院ブログ BLOG

神経をとる治療・神経を取ったあとの治療、どうして「根管治療」は時間がかかる? Blog

歯科医 永田 さやか (ながた さやか)
スカイ&ガーデン デンタルオフィス 院長

虫歯が深くまで進行し、虫歯菌が歯の神経(歯髄)にまで達すると強烈な痛みが出ます。この段階になると痛みを取る為に、歯の神経を取る治療=「抜髄(ばつずい)治療」が必要になります。

歯髄は歯の最深部にある神経や血管を含む組織です。歯髄があった空洞を無菌化し、再度感染しないようにするための一連の治療を「根管治療」といいます。根管治療は治療手順が数段階あるため治療回数がかかります。また一回の治療時間が長くなることが多く、治療期間中は上手く噛めなくなったりして不自由です。

患者さんにとって「何をやっているのか」分かりにくく、「回数がかかって大変」な根管治療。まずは「歯の神経を取る=抜髄治療(ばつずいちりょう)」についてご説明します。

抜髄治療の流れ

感染した歯髄は「歯髄炎」という炎症を起こすため取り除かなくてはなりません。虫歯以外でも重度の知覚過敏や歯にヒビが入ってしまった場合に神経を取ることがありますが、抜髄治療は以下のような手順で進められます。

① 局所麻酔をする

② 虫歯(う蝕)の部分を完全に取りきる
虫歯菌に感染している歯質を、う蝕検知液を使いながら丁寧に除去していきます。さらに露出した歯髄を効率よく、確実に除去できるよう形成します。この際、歯の高さを落として上下の歯が当たらない様調整することがあります。

③ 細い専用の器具を使用し神経をかき出す
唾液が治療中の根の中に入らないようにゴムのシートをかけて治療する場合があります。息苦しいこともありますが、唾液中の細菌の侵入を防ぐ大事な作業です。時間がかかる為、お口を開けるのを補助する器械(開口器)を使うこともあります。

④ 根っこの中を殺菌し、消毒薬を入れる

⑤ 仮封をする
見た目や噛み合わせが気になる場合は仮歯をいれます。治療後、麻酔が切れた後はしばらく痛みが続くことがあるので鎮痛剤を処方されることがあります。

治療当日は仮封が固まるまでに少し時間がかかることと、麻酔が切れるまでに食事すると舌を噛んでしまっても気づかないなどのリスクがあり危険なので、麻酔が切れてからのお食事をおすすめいたします。

抜髄治療のQ&A

初めて抜髄治療を受けられた方は、分からない事ばかりでご不安に思われることも多いでしょう。実際に患者様から寄せられるQ&Aをみていきましょう。

Q,神経を取ったらもう治療は終わり?

A,抜髄したからといってその日に根の治療が全て終わるわけではありません。虫歯菌に感染し、炎症を起こした歯が無菌になるまで治療が続きます。歯医者での治療回数の多さに不満を持たれる方もおられますが、根の治療に何度も回数がかかるのは、根の中の症状がなくなるまで洗浄をし続けるからなのです。

地道な作業ですが、十分に殺菌する前に急いで治療を終えようとしてしまうと再治療の可能性が高まりますので根気強く治していきましょう。

Q,神経を取ったのに歯が痛い。今迄みたいに咬めません。大丈夫?

A,「神経をとる」と言っても、あくまで歯に通っている神経を根の先端で切断しているにすぎません。根の先端には神経を切断してできた傷ができた状態になりますから、数日間はズキズキとした痛みが続きます。

特に長期間痛んでいた歯や、眠れないほど強い痛みのあった歯は痛みが出やすい状態になっている為注意が必要です。麻酔が切れた後痛くならないように、治療後すぐに処方された痛み止めを服用したほうがいいでしょう。

また、食事をした時などは数週間、長い場合ですと数か月痛みが残る事もありますが、ほとんどは時間とともに落ち着いていきますのでご安心ください。

Q,前歯はすぐ根管治療が終わりました。今回の奥歯、どうして治療に回数がかかるの?

A,神経の本数は歯種によって違います。前歯では多くの場合神経1本だけですが、奥歯は人によっても違い、2本から5本くらいと本数が倍増します。その分時間がかかります。

また根の中は先端まで目で見ることができないうえ、1本1本違う様々な形態をしているため治療が非常に困難です。針のような器具を用いて神経をかき出していきますが、先端が曲がっていたり、細く閉じていたり、途中で合流していたりと複雑な形態をしている場合はさらに時間がかかります。根の中がはなかなか綺麗にならない時は消毒のお薬を何度か交換していきます。

歯の種類や、神経の本数、神経の形態、炎症の具合など諸所の条件で根管治療は時間と回数がかかる場合があります。しっかりと治すため治療の回数がかかってしまうことがありますのでご了承ください。

神経の治療が終わった後は。

神経の治療が終わった歯は、土台(コア)を立てて歯を補強し、その上から全体を覆いかぶせる治療が一般的です。

虫歯で歯が大きく欠損しているうえに、また歯を削る必要がある為 「ちょっと詰めるだけじゃダメなの?」と思われるかもしれませんが、土台をいれて被せるのには理由があります。

理由1、神経を取った歯は物理的な強度が弱くなるため

歯の内部には神経とともに血管が流れていて、常に血管から栄養を供給されています。

神経を取ると歯は血管からの栄養がうけられなくなり、割れたり、かけたりしやすくなってしまいます。生木と枯れ木のような違いがある為、土台で補強する必要があります。

理由2、細菌への抵抗力がなくなるため

神経を取った歯は、本来人の体がもつ細菌への抵抗力、免疫力がなくなります。また虫歯や根管治療で歯の中まで深く欠損しているため、細菌が侵入する隙間がたくさんあります。

そのため、歯の全体を被せてしっかりと密封することで虫歯菌が再度侵入するのを防ぎます。

歯の土台(コア)はとても重要です!

コアは一度装着すると外すのが困難です。土台を入れた歯の再治療が必要になった時に、コアを外せても残った歯質が薄くなり、歯が割れてしまうこともあります。

歯を長持ちさせるためにも土台の治療は「できる限りやり直しをしないで済ませる」ことが必要です。歯の土台には主に2種類あります。

メタルコア

従来型のコア。金属で強度はありますが、硬すぎるため、くさび効果により歯が割れてしまう可能性があります。

また天然歯は光を透過しますが、金属製のコアを装着することで光を遮断してしまうため、前歯などに用いると不自然な仕上がりになります。金属なので歯茎に色素沈着も起こします。

ファイバーコア

ファイバーコアはグラスファイバーの芯が入っています。歯と同じくらいの硬さでしなやかさがあり、衝撃を吸収するため歯にも優しい素材です。金属アレルギーでも安心ですし、差し歯にしても美しく自然な仕上がりが可能です。

土台を装着したら、被せ物を入れます。

土台を入れたら被せ物をしますが、この被せ物治療の質も根管治療の成否を左右します。

被せ物の治療では、最終的に被せ物を歯科用の接着剤で留めるのですが、どうしても歯との間につなぎ目が生じます。つなぎ目が歯にどれだけぴったりフィットしているかを「適合」といいますが、不適合の状態だとそのつなぎ目にプラークが溜まっていきます。

溜まったプラークはブラッシングやクリーニングでも十分に落とすことができないため、虫歯が再発し、徐々に歯の中に入り込んでいきます。神経がない歯は、むし歯が進んでいても痛みが出ないため、気づかずに虫歯が進んでいきます。

被せ物には様々な種類があります。素材により適合の良しあしも変わる為、歯科医師とよく相談されてお口の条件にあったものを選択するとよいでしょう。

 

 

(関連記事:虫歯治療

インビザライン日記 インプラント日記 医院ブログ 症例集