医院ブログ BLOG

骨が足りずインプラントは難しいと言われた方へ Blog

歯科医 永田 さやか (ながた さやか)
スカイ&ガーデン デンタルオフィス 院長

「骨の量が不足しているため、インプラントは難しいと言われた」このような説明を受け、治療を諦めてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に埋入するため、十分な骨の厚みや高さが求められます。しかし、骨が不足している場合でも、骨造成と呼ばれる処置によって治療が検討できるケースがあります。今回は骨が不足する理由や、骨を増やすための代表的な方法であるGBR、サイナスリフト、ソケットリフトについて解説します。

なぜインプラントには骨の量が必要なのか

インプラントは顎の骨に固定されることで機能します。例えるなら、建物を支える基礎部分のような存在です。基礎となる地盤が十分でなければ、安定した構造を維持することは難しくなります。歯を失うと、その部分の骨には噛む刺激が伝わらなくなります。その結果、「廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)」と呼ばれる現象によって、骨が徐々に吸収されていきます。

また、歯周病が原因で歯を失った場合には注意が必要です。歯周病は歯を支える骨を破壊する病気であるため、歯が抜けた時点ですでに骨が大きく失われていることがあります。骨の厚みや高さが不足した状態でインプラントを埋入すると、人工歯根の一部が露出したり、長期的な安定性に影響を及ぼす可能性があります。そのため、事前に骨の状態を正確に把握し、必要に応じて骨造成を行うことが大切です。

インプラント治療を可能にする骨造成

横幅や高さを補うGBR(骨組織再生誘導法)

GBRは、骨の幅や高さが不足している部分に骨を再生させるための処置です。前歯部や、歯を失ってから長期間経過した部位などでは、歯ぐきとともに骨も痩せてしまうことがあります。そのような場合に行われることが多い方法です。処置では、不足している部分に人工骨や骨補填材などを配置し、その上を「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜で覆います。骨を作る細胞は増殖速度が比較的ゆっくりですが、歯ぐきの細胞は早く増殖します。そのままでは歯ぐきの組織が先に入り込み、骨が形成されるスペースが確保できません。そこでメンブレンを使用することで不要な細胞の侵入を抑え、骨芽細胞が活動しやすい環境を整えます。これがGBRの基本的な考え方です。

上顎の空洞を利用して骨を増やすサイナスリフト

上顎の奥歯の上部には、「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞があります。上顎の奥歯を失うと、この上顎洞が下方へ広がり、骨の厚みが減少することがあります。そのため、インプラントを支える骨の高さが不足するケースが少なくありません。このような場合に行われる方法の一つがサイナスリフトです。この術式では歯ぐきの側面からアプローチし、上顎洞の粘膜であるシュナイダー膜を慎重に持ち上げます。その下に骨補填材を入れて骨の形成を促します。一般的には残っている骨の高さが数ミリ程度しかない場合など、比較的大きな骨造成が必要なケースで検討されることがあります。骨量が著しく不足している場合にも適応しやすい点が特徴です。

比較的軽度な骨不足に対応するソケットリフト

ソケットリフトも上顎洞を利用して骨を増やす方法ですが、サイナスリフトとはアプローチ方法が異なります。インプラントを埋入する方向から処置を行い、専用器具を使用して上顎洞の粘膜を持ち上げ、そのスペースに骨補填材を入れます。サイナスリフトと比較すると侵襲を抑えやすく、残存骨がある程度確保されているケースで選択されることが多いです。一般的には、残存骨が5mm前後以上ある場合の選択肢として検討されることがありますが、実際に選択できるかどうかは骨の状態や解剖学的条件によって異なります。

このように骨造成と一言でいっても、骨を増やしたい部位や不足している量によって、行われる術式が変わってきます。骨量が大きく不足している場合はサイナスリフト、一定の骨が残っている場合はソケットリフトという考え方が術式選択の目安になります。

※サイナスリフトやソケットリフトの詳細は、インプラント治療ページもご参照ください。

安全性に配慮した骨造成のための取り組み

骨造成は、インプラントを支える骨を増やすための外科処置です。安全性に配慮しながら治療を進めるためには、骨の状態を正確に診断し、一人ひとりに適した方法を選択することが欠かせません。また、繊細な処置を行うための設備や衛生管理も重要な要素となります。そのため骨造成では、高度な診断と外科処置に加え、事前準備や手術環境が非常に大切になります。

歯科用CTによる三次元的な診断

レントゲンだけでは把握が難しい骨の厚みや高さ、神経や血管の位置、上顎洞の状態などを立体的に確認します。とくにサイナスリフトでは、シュナイダー膜の厚みや形態を事前に把握することが、治療計画を立てる上で欠かせません。

マイクロスコープを活用した精密な処置

上顎洞の粘膜は非常に薄く、慎重な操作が求められます。拡大視野を活用することで細かな組織の状態を確認しながら処置を進めやすくなり、より精密な外科手術につながります。

滅菌管理を徹底した手術環境

骨造成では感染予防が重要です。使用する器具の滅菌や衛生管理を徹底し、清潔な環境で処置を行うことで、術後のトラブルリスクの低減に努めています。

まとめ

「骨が足りないためインプラントは難しい」と説明を受けた場合でも、骨造成によって治療の選択肢が広がる可能性があります。ただし、骨の量や質、全身状態によって適応は異なるため、まずは精密な検査と診断が必要です。インプラント治療では、骨の状態を立体的に把握したうえで、一人ひとりに適した治療計画を立案することが大切になります。骨不足を理由にインプラント治療を諦める前に、まずは現在のお口の状態について相談してみてはいかがでしょうか。

インビザライン日記 インプラント日記 医院ブログ 症例集